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東京高等裁判所 昭和48年(ネ)809号 判決 1974年5月08日

主文

原判決を左のとおり変更する。

控訴人は被控訴人に対し金二、三九五、八三三円およびこれに対する昭和四七年九月一〇日以降支払ずみに至るまで年五分の金員の支払をせよ。

被控訴人の請求中その余を棄却する。

訴訟費用は、第一、二審を通じて二〇分し、その一を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。

この判決は、被控訴人の勝訴部分につき仮に執行することができる。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出援用認否は、次に付加訂正するほかは、原判決の事実欄に記載のとおりであるから、これを引用する。

控訴代理人は、「本件においては、形式上は控訴人が被控訴人の名義を借用して訴外農協から金五〇〇万円を借り受けたものであるが、実質上は被控訴人が訴外農協から右金員を借り受け、控訴人は被控訴人から、被控訴人が訴外農協から借り受けた右金員を借り受けたものであるから、被控訴人と控訴人間の金五〇〇万円の貸借につき利息制限法が適用されるべきである。したがつて、仮に右貸借につき年二割五分の利息の約定がなされたとしても、年一割五分を越える部分は無効であり、控訴人は被控訴人に対し、右の利息としては年一割五分の割合の金員を支払うべき義務があるにすぎない。ところで、控訴人は既に年9.125分の利息を支払つたから、控訴人が被控訴人に支払うべき利息の残額は、金五〇〇万円に対する年一割五分と年9.125分の差である年5.875分の割合にすぎない。」と陳述した。

被控訴代理人は、新たに、甲第二号証(写)を提出し、当審の証人藤牧鋭全の証言を援用し、乙第一ないし第七号証、第八号証の一ないし三(第八号証の一ないし三は原本の存在とも)の成立を認めると述べ、控訴代理人は、新たに、乙第一ないし第七号証、第八号証の一ないし三(写)を提出し、甲第二号証の原本の存在および成立を認めると述べた。

原判決二枚目裏六ないし七行目の「証人藤巻営全」とあるを「証人藤牧鋭全」と改める。

理由

一当裁判所は、被控訴人の本訴請求を金二、三九五、八三三円およびこれに対する昭和四七年九月一〇日以降支払ずみに至るまで年五分の金員の支払を求める範囲において理由があると判断するが、その理由は次のとおりである。

二当事者間に争いのない事実は、原判決の理由欄一に記載のとおりであるので、これを引用する。

三控訴人が被控訴人の名義を借用して訴外農協から金五〇〇万円を借用するについて控訴人が名義借料として被控訴人に対し、訴外農協からの金員の借入期間一年につき借入金の二割五分の割合の金員を支払うことを約したものでああることは、原判決の理由欄二に記載のとおりであるから、これを引用する。

ただし、原判決三枚目表九ないし一〇行目の「証人藤巻営全の証言」を「証人藤牧鋭全の証言(第一、二審)」と改め、同一一行目の「を総合する」の前に「弁論の全趣旨」を加え、同三枚目裏、四枚目表および裏の「藤巻営全」および「藤巻」をすべて「藤牧鋭全」および「藤牧」と改め、同四枚目表二行目の「中央相互銀行」を「中部相互銀行」と改め、同四枚目表八ないし九行目の「年二割五分」とあるを「訴外農協からの金員の借入期間一年につき借入金の二割五分の割合」と改め、同四枚目表末行目の「六月五日頃」とあるを「六月五日」と改め、同裏九行目の「五月四日頃」とあるを「五月四日」と改める。

四控訴代理人は、本件においては、形式上は控訴人が被控訴人の名義を借用して訴外農協から金五〇〇万円を借り受けたものであるが、実質上は、被控訴人が訴外農協から右金員を借り受け、控訴人は被控訴人から、被控訴人が訴外農協から借り受けた右金員を借り受けたものであるから、被控訴人と控訴人間の金五〇〇万円の貸借につき利息制限法が適用されるべきである、と主張するので、この点について判断する。

利息制限法は金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約について適用されるものであるところ、被控訴人と控訴人間の本件契約は、控訴人は訴外農協の組合員でなかつたため訴外農協から金員を借りることができなかつたが、被控訴人はその組合員で訴外農協から金員を借りることができる地位にあつた(これらのことは、第一、二審の証人藤牧鋭全の証言、第一審の被控訴本人尋問の結果により認められる)ため、控訴人は被控訴人のこの地位を利用し、被控訴人をしてその所有の不動産を訴外農協に担保に提供させ、訴外農協から金五〇〇万円を被控訴人名義で借り入れ、同金員を控訴人の中部相互銀行に対する債務の弁済に充当しようというもので、このような目的のため、控訴人が被控訴人の前記の地位と被控訴人の担保等その人的物的信用を利用しようというものであるから、これをもつて被控訴人と控訴人間の関係を金銭の消費貸借またはこれに類する関係と同視することはできないものといわなければならない。そうすれば、被控訴人と控訴人間の本件契約については、利息制限法の適用のないことは明らかである。控訴人の右主張は採用できない。

五以上認定したところによれば、控訴人は被控訴人に対し、控訴人が訴外農協から金五〇〇万円を借り入れた昭和四五年六月五日からその返済された昭和四七年五月四日まで五〇〇万円に対する年二割五分の割合の金員、すなわち

金二、三九五、八三三円およびこれに対する本訴状が控訴人に送達された日の翌日であること記録上明らかな昭和四七年九月一〇日以降右金員の支払ずみに至るまで民法所定年五分の割合の遅延損害金を支払わなければならない。

したがつて、被控訴人の本訴請求は右の範囲において理由があるからこれを認容すべきであるが、その余は理由がないからこれを棄却すべきである。よつて、控訴人の本件控訴は一部理由があるからこれを認容し、その余を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九二条、仮執行宣言につき同法一九六条一項を適用し、主文のとおり判決する。

(満田文彦 真船孝允 鈴木重信)

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